私たちは、過疎地域の医療介護インフラを持続可能なものに整備し、健康寿命を延ばすための地域活動やサービス、そして地域の自然資本を活用した新たな産業の創出に取り組んでいます。
具体的には、次のような活動を行っています。
「①遠隔医療にも対応した訪問看護サービスの設置」
「②一次予防DXを取り入れた高齢者向けヘルスケアサービス」
「③高齢者の医療リテラシーとデジタルリテラシーを向上させる健康教室」
「④社会的交流を促進するコミュニティランチ」
「⑤医療関係人口を創出するための医療介護従事者向けヘルスツーリズム」
とびしま海道全体で過疎化が進み、人口減少や流出により地域コミュニティの希薄化・崩壊が進行しています。これに伴い、医療アクセスの不便さや生活サービスの減少、産業の衰退など、さまざまな問題が山積しています。その結果、特に高齢者は「このまま住み慣れた地域で暮らしていけるのか」という不安を抱えています。
これは全国的な課題ですが、より深刻で過酷な状況にあるとびしま海道からソリューションを生み出すことで、全国の他地域でも役に立つと考え、この活動を開始しました。
2019年にとびしま海道内の高齢者に関して、介護事業者へのヒアリングを実施した結果、老夫婦世帯や独居世帯が全体の半数程度を占めていることがわかりました。
また、退院後の在宅療養や在宅介護、看取りが非常に難しい状況であることが判明しました。このため、地域の医療介護関係者の中で訪問看護ステーションの設置が優先課題として浮上し、まずは訪問看護ステーションを設置することとなりました。
医療従事者が少ない島しょ部では、多くの住民に医療を届けることが困難な状況が続いていました。そのため、介護が必要になった場合は介護施設に入るか、離れた家族のもとに引っ越すかという二択しかありませんでした。
しかし、私たちの介入により、在宅療養や在宅での看取りが可能となり、住み慣れた地域で暮らし続けるという選択肢が増えました。さらに、IoT技術の普及によって、遠隔で健康状態をチェックできるようになり、住民が健康的な生活を続けられる希望が見えてきました。
この取り組みを通じて、地域の病院や診療所の医師、介護関係者、そして地域住民は少しずつ希望を見出しつつあると感じています。特に、地域に看護師がいることで健康不安が軽減されていることは、大きな変化です。
さらに、コミュニティランチに参加していたおばあちゃんが、「こんなに楽しいなら、もうちょっと生きてみたいな」と話してくれたことが、とても印象に残っています。
2020年より活動開始から4年が経過し、次に挙げる通り、さまざまな社会的インパクトの創出を図ることができた。
医療従事者の移住・雇用と当社への採用希望者:50名以上
看護学生への実習フィールド提供:年間200名以上
健康教室の参加者数累計:400名以上
コミュニティランチ参加者数累計:300名以上
実証実験への住民参加:50名以上
ヘルスツーリズムによって働きがいを見つけられた看護師数:11名
IoT活用による自発的な健康管理を行う高齢者10名
医療関係人口の創出:地域に年間で200人以上の医療従事者が訪問
当初、島嶼部での訪問看護事業は経営的に成り立たないと言われていましたが、昨年、通年で黒字化を達成することができました。そこで次の段階として、IoTを活用した(スマートウォッチやアプリを利用した)自発的な健康管理を行う高齢者を増やし、ヘルスツーリズムを通じて全国から医療介護従事者を呼び込むことを進めていきたいと考えています。
とびしま海道における今後のビジョンは、一人暮らしの高齢者が健康不安を抱えることなく、いきいきと毎日を暮らせる環境を作ることです。
「とびしま海道の医療を考える」というイベントを毎年開催しています。当社スタッフがイベントを運営し、住民の皆さんや診療所・病院の医師、地域包括支援センター、市議会議員の方々にもご参加いただいています。
このイベントは、住み慣れた地域でどのように暮らしていくか、課題を共有し、地域全体で解決策を考える取組です。
団体名 | Nurse and Craft株式会社 |
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代表者 | 深澤裕之 |
取組期間 | 2019年8月から現在までの約4年10月間 |
ホームページ | https://nurseandcraft.io/ |